・偶然から必然へ
第一録のとおり,始まりは自然の悪戯によって生まれた果実酒や蜂蜜酒、人類がたまたま口にした「偶然」でした。
しかし、そこから人類が意図してお酒を造り始めた背景には、生きていくための
「必然性」がありました。
その理由は、大きく分けて3つとされています。
- 生存のための必然
- 社会のための必然
- 精神のための必然
●生存のため・・・
古代において、川や井戸などの「生水」をそのまま飲むことは、常に感染症や疫病のリスクと隣り合わせでした。水の安全な保存技術がなかった時代、アルコール発酵というプロセスは、液体を殺菌し長期保存を可能にする画期的な知恵だったのです。
実際に、中世ヨーロッパでは「水の代わりにビールやワインを飲む」ことが一般的でした。つまり、お酒は嗜好品である前に、
人類が安全に水分補給するための死活問題だったと言えます。
●社会のため・・・
近年の考古学では、「人間はお米や麦を”食べる”ためではなく、”酒を造る”ために農耕を始めたのではないか」という大胆な説さえ唱えられています。
お酒を造るには、大量の穀物や果物、そして一箇所に定住する時間が必要です。一杯のお酒を安定して手に入れるために、人類は集落を作り、農業を発展させ、文明を築いていきました。お酒は、人類を野生から文明へと動かす強力なエネルギーだったと言えます。
●精神のため・・・
古代の人々にとって、自然の猛威や病、死はコントロールできない恐怖でした。その恐怖を和らげ、目に見えない大いなる存在(神)と繋がるための儀式に、お酒の「酔い」は不可欠なものでした。
日常の苦しみから一瞬だけ解放され、共同体の絆を確かめ合う。お酒が持つこの精神的な役割があったからこそ、世界のどの文明でも、独自の「酒造り」が必然的に誕生していったのです。
・酒造り 始まりの地
「必然」として広まったお酒。その歴史の針を最初に戻すと、ある一つの地域にたどり着きます。
今から約8,000年以上前。人類が初めて本格的な「酒造りの文明」を築いた場所、それは中東のメソポタミア、そして古代エジプトでした。彼らが造っていたのは、ワイン、そして現代の姿とは全く異なる「ストローで飲むビール」だったのです…
次回の「第三録」では,酒造りが始まった地域について紹介します!




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