世界で最初にお酒が生まれた場所はどこか。これには大きく分けて「中東説」と「中国説」の2つがあります。
西のメソポタミアや古代エジプトで約8,000年前に麦のビールやワインが造られていた頃、実は東の中国(賈湖遺跡)では、なんとそれよりも前に「お米とハチミツと果実」を混ぜた最古のお酒が造られていました。地球の東西で、人類はほぼ同時期に、それぞれの環境に合わせた「始まりの酒」を誕生させていたのです。
今回の『第3録』では、まず西の舞台である「中東説」にスポットを当て、ピラミッドや砂漠の文明が育んだお酒のルーツを紐解いていきます。
・中東説:ピラミッドを支えた最古の源流
世界で最初に本格的な酒造りが始まったのは、今から約8,000年以上前、中東の「メソポタミア」や「古代エジプト」と言われています。
当時、この地域はチグリス川・ユーフラテス川などの恵みによって、人類が初めて「農耕」を大成功させた場所でした。大量に収穫できた麦やブドウが、偶然の雨や野生の酵母と出会い、人類最古の「ビール」と「ワイン」がこの地で産声をあげたのです。
・ピラミッド建造を支えたのは「ビール」?
古代エジプトにおいて、お酒はただの嗜好品ではなく、立派な「給料」でした。
事実、ピラミッドを建設した労働者たちには、過酷な労働の対価として毎日大量のビールが支給されていたという記録が残っています。当時のビールはドロドロとしていて栄養価が高く、今でいう「飲む栄養ドリンク」のような存在でした。巨大な建造物を支えたのは、実はビールのパワーだったのかもしれません。
・神々が愛した、最初のワイン
一方、メソポタミアやエジプトの王族や貴族たちが熱狂したのは、ビールではなく「ワイン」でした。
ワインはビールの何倍も手間がかかり、希少価値が高かったため、贅沢品として「神への捧げ物」や「ファラオ(王)の飲み物」とされたのです。古代の壁画には、王たちが美しい器でワインを嗜む姿が優雅に描かれています。
当時は白ワインもありましたが、王族たちが神聖視したのは「赤ワイン」でした。
古代エジプトでは、赤ワインのその鮮やかな色を「大地の神の血」、あるいは生命力そのものと考えていました。そのため、ファラオが神に祈りを捧げる儀式には必ず赤ワインが使われ、王が亡くなった際には「あの世でも困らないように」と、大量の赤ワインの壺が一緒に埋葬されたのです。
このように、中東の地で独自の進化を遂げたビールとワイン。これが西側における「お酒の始まり」の姿です。
しかし、実はこれよりもさらに古いと言われる「東の物語」が存在します。次回の**『第4録』では、中東から遠く離れたアジアの大地、「9,000年前の古代中国」**へと舞台を移し、歴史をさらに遡るもう一つの最古の謎に迫ります。
・【今日の小ネタ】古代のビールはストローで飲んでいた?
最後に、思わず誰かに話したくなるクスッと笑える小ネタを。
古代エジプトやメソポタミアのビールは、現在のものとは違って濾過技術が未熟でした。そのため液体の表面には麦の殻やゴミが大量に浮いていたそうです。
そこで彼らが編み出したのが、**「長くて細いストローを使って、底の綺麗な液体だけを飲む」**というスタイル。古代の宴会の壁画を見ると、みんなで1つの大きな壺を囲み、長いストローを突っ込んで仲良くビールを吸い合っている、なんともシュールで微笑ましい姿が描かれています。




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